昔はときたま自家製パンを焼くことがありました。
2011年、断捨離の一環でパン焼き機を捨ててからは、それもできなくなりました。
うちのパン焼き機は独立したホームベーカリーではなく、オーブンに付随していたパンこねケースです。材料を入れてボタンを押せば、約4時間後に食パンができあがります。
コスパはいまいちなんですよね。焼きたてはおいしいけど、時間材料費光熱費を考え合わせると、市販品のほうがましに思えて、パンなんか2度と作るまい、と。
やっぱりパンを作りたい
一昨年あたりから、保管場所を取るわけでもないのに安易に処分したことを後悔し始めました。
というのも、食品添加物をなるべく排した食生活というものにこだわるようになり、市販のパンの添加物の多さが気になったのです。
無添加に徹するなら、食費に大枚はたかないと無理。私の場合、優先順位が、まず価格、次に量、それから添加物、ラスト味、見ばえはランク外・・・てなもんだから、半端で偏ったこだわり方です。
便利な調合調味料やナニナニの素などはやめ、だしはとらず、塩、コショウ、酢、オリーブオイル、味噌、醤油を基本としたシンプルな味つけに慣れるよう努めてきました。
弁当や総菜はかなり減らしたけど、たまに食べると、もちろんうちのよりおいしい。添加物てんこ盛りの味さあ。と、負け惜しみをつぶやいています。
パンケースがあれば、添加物の少ないパンが作れるのに・・・。
だからって、ホームベーカリーを買う気にはなれぬ。価格第一な食生活だもん。
こねないパン
若いころ、実家のガスオーブンで焼いたパンやピザは手ごねでした。自動パン焼き機なるものが開発されるまでは、手でこねるのが当たり前だったのです。
だけど、手間ひまかかるわりに、わあおいしいってわけでもなく、手作りしたという自己満足に過ぎなかったような。
あの面倒さを思い返すと、気が萎えます。そうまでして作りたくもなし。
そんなとき目にした『世界一やさしいパン作りの本』(大原照子/文化出版局)。
強力粉、砂糖、塩、水、イーストを軽く混ぜ合わせて放置し、焼く、という簡単さ。ホントにそれでパンができるのかしら。
いぶかりつつも、さっそく実践。ただし、材料は半分で。粉3カップも投じて失敗したら、目も当てられないもの。
結果は? うーむ、はたしてこの物体がパンなのか? ってな仕上がりでした。
一時発酵ではけっこうふくらんだし、ガス抜きしてしぼんだ後、二次発酵でもある程度ボリュームが出たのに、焼き上がりはペシャッとしてなんだかガチガチ。しかも、230度という高温で焼いたのに、焼き色が不十分で、白っぽいのです。パンが焼けるときのよい香りもあまりなくて。
本には『中はもっちり、皮はぱりっと』とあったけど、私のは、中はもちもち過ぎ、皮はぱりぱり過ぎ。皮のかけらが刺さって口の中に血豆ができる始末。
あんまりひどいので、写真は撮っていません。
改めて『世界一やさしいパン作りの本』の写真を見直すと、粉3カップ(約330g)も使っているのに、小さめのパンです。私が作ったものの倍くらいで、つまりふくらみの程度は同じ。中はどっしりべっとりしていそうな気配。それを「もっちり」と表現しているだけかも。
こねないパンは何が違うのか
昔作ったホームベーカリーと上記こねないパンのレシピを比較してみます。こねないパンにはグラム表示がないので、食品成分表をもとに換算しました。
ホームベーカリー:粉250g、砂糖14g、塩4g、イースト3g、水180cc、スキムミルク、バター。こね時間は30分、一次発酵40度で2時間、二次発酵30分。焼く温度は180度前後で30分。時間と温度は推定です。自動なので明示されないのです。
こねないパン:粉330g、砂糖8g、塩6g、イースト小さじ1/3(1.3gくらい?)、水300cc。一時発酵20~40度で12~15時間。二次2~3時間。焼き上げ230度で45分。
こねないパンはイーストが極端に少なく、水が多く、発酵時間が長い。少ないイーストで発酵させるには時間が必要というわけでしょう。ただし、それら条件は、こねるこねないとは無関係に見えます。
なぜこねなくていいのか、明確な理由は記載されていません。
ふつうのパン作り本やネットで少し調べたら、こねてもこねなくても分量の割合はさまざまで、結局パンなんてどんな配合でもできあがるらしいとわかりました。
焼き色がつかなかったのは、過発酵のせいらしい。半量なら小さじ6/1にすべきだけど、量りにくいから1グラムくらい入ったような気もする。でも過発酵はイーストの量よりも、温度と時間の問題に思えます。
ガチガチになったのは、油分がないのに高温で長時間焼いたからでしょう。半量だから30分で出したんだけど。水分が多いから45分も焼くみたいだけど、初めから水を少なめにすればよさそう。
ミルクやバターは、パンに柔らかさとしっとり感を与える役割があります。
オリーブ油パン
もうこの本には頼れない。
と、自分流の配合でチャレンジ。
カメリア強力粉150g、砂糖20g、塩2g、イースト1g、水90cc、エクストラバージンオイル15g。
砂糖は茶色っぽいてんさい糖です。塩はロレーヌ岩塩。
翌日の昼に食べる予定で、作り始めたのは夕方。
20センチの容器に粉類を入れて混ぜ、水と油を注いでさらに1分間混ぜます。ラップをかけて、暖房のない部屋に放置。
ちなみにこの黒い鍋は、テフロン加工の深めフライパンの取っ手を外したもの。混ぜる、発酵をこの中で済ませ、焼くときは丸ごとオーブンに入れます。ボウルやオーブンシートは使う必要がありません。片づけ楽ちんで経済的。
翌朝。そこそこふくらんではいるものの、てんさい糖のつぶつぶが見えます。もう少し混ぜるべきだったか。
箸で押さえてひっくり返したら、ガスが抜けてしぼみました。
二次発酵は40度のオーブンで2時間半。しぼむ前の状態くらいにふくらんだので、210度で蓋をして20分、蓋を取って10分焼きました。
焼きムラがあるし、ふくらみも悪く、これまたパンだかなんだか不明な見ばえですが、初回の失敗作に比べると、味も香りもパンらしくなりました。皮は厚くてやや硬め。焼く温度がまだまだ高過ぎるようです。
ホームベーカリー時代、バターの代わりにゴマ油を使ったら、硬くてちっちゃなパンができた経験があります。オリーブ油も液状だから、ふくらみに悪影響を与えるのではないかと思います。
バターブレッド
となると、やっぱりバターの出番。
品薄で値上がりしてからは購入を控えていたけど、パン作り探求のためには投資もしなきゃと、一番ポピュラーな雪印北海道バター(有塩)を買ってきました。
粉150g、てんさい糖10g、塩2gを混ぜます。バター20gをのせ、ヘラでバターを細かく切るようにしてよく混ぜ合わせます。イースト1gをふりかけ、水100gを入れて3分ほど混ぜました。バターのかたまりが随所に見えるので、キッチンでしばらく放置した後、こねるに近い念入りな混ぜ方を3分間。表面はけっこうなめらかになりました。
そして洗面所(室温18~14度くらい)に置いて15時間。お風呂に入るときは台所に退避させます。
ガス抜きをし、二次発酵は40度で2時間、その後オーブンの中に1時間放置したら、かなりふくらみました。
焼き上げは180度で20分+220度で5分。
できあがりはこんな感じ。
焼いてすぐに切ったので、切り口が汚くなっちゃいましたが、きめが粗いながらもふんわりして風味も上々、さすが救世主バター様。見た目からは信じられないほどおいしいできでした。何もつけずそのままで半分ペロリ。手はべっとり。
パンの本にはたいてい、熱いうちは切りにくいので、粗熱が取れてから切りましょうなんて書かれています。ばかばかしい。目の前に焼き立てのパンがあるのに、なんで冷めるまでお預けなのさ。焼き立てパンはちぎって食べるのが一番だよ。