わが国では中高年のほとんどが罹患しているといわれる歯周病。
私も数年前検査を受けたとき、歯周ポケットの深さが4ミリの部分が1か所ありました。検査による出血もいくつか見られたようです。
でもまあ、深いのは1か所だけだから、ていねいに磨いていれば改善するだろうと、高をくくっていたのです。
ていねいにって? それまで使用していた電動歯ブラシ(ブラウンの5,000円程度の品)をやめて、普通の歯ブラシで磨くようにしました。電動だとおおざっぱになりやすく、さりとて時間をかけ過ぎると歯や歯茎を傷めそうだから。
ポケットの深い闇
そして3か月後の検診の時期が来たのですが、予約の電話をするのが面倒で、ずるずると放置してしまいました。
1年と6か月過ぎたある日、具なしチャーハンを食べていたら、ガリッと音がして、下前歯の端っこが欠けてしまったのです。あぎゃー。
お米に石ころでも混じっていたのかしら、ひどーい。玄米って、こういう危険性があるのですよ。
やむなく近所の歯医者さんへ行きました。歯並びの写真やレントゲンを撮り、口内細菌を調べ、歯周検査をしたあげく、カウンセリング。
歯周病は改善どころか、げーっと驚くばかりの悲惨なありさまになっていました。
かつて4ミリだったのは、右上7番の奧(遠心)でした。歯の番号は、前中心の2本を1番として、奧へ数えていきます。親知らずは8番です。私は親知らずを全部抜いたので、7番が一番奥です。
その右上7番がなんと7ミリに。しかもその対合歯(右下7番)も7ミリ。加えて、右6番や左奥など数か所が4~6ミリと計測されました。
あんなにていねいに磨いていたのに、この急激な悪化はなんとしたことだ。
歯周病治療の限界
翌週から歯周病治療が始まりました。
4回に分けて歯茎の清掃や歯石取りを行い、ポケットの深い部分に薬(抗生物質?)を注入するというものです。その後30分くらい、うがいや飲食は禁止。口の中が気持ち悪いのでつばを吐いたら、黄色い柔らかいかたまりが混じっていました。それが薬の正体。
保険の歯周病治療は、ひととおり済んだら当分はできないらしく、その後はかみ合わせを調整をしたり、古い詰め物や被せもの交換をすすめられ、言われるままに通い続けました。詰め物のすきまがほとんど二次う蝕状態になっていたようです。何十年も前の治療跡だからいたしかたないかな。
なにしろ虫歯の本数が多く、1本は根っこの治療をやり直したので、かなりの歳月を要し、詰め物がすべて新品になったのは1年以上経ってからです。
「これですべての治療が終わりました。あとは自費のメンテナンスに来てください。」そう言われた時点で、右奥7番は上下とも6ミリ。左奥にも4ミリの部分がありました。
歯周病治療は最初の1回だけ。超音波での清掃は毎月おこなっていましたが。
6ミリもあるのになんで歯周病の治療をしてもらえないのかと院長に尋ねたところ、ポケットはそう簡単には浅くならないとか、改善しているからいいじゃないかとか、歯切れの悪い返事。
不本意ながら何度かメンテナンスに通いましたが、やっぱり気に入らない。
よその歯医者さんで歯周病治療を受けますと宣言して、事実上絶縁しました。
自力で改善
実はその後半年以上、どこにも行きませんでした。家でしこしこ磨いていただけです。
しかしながら、ポケットの具合は素人には見当がつきません。
研磨剤入りの歯磨き粉を使わずにいたので、だんだん着色が進み、歯全体が茶色っぽくなってしまいました。あまりに恥ずかしくて人前で口を開けることもはばかられます。外側も汚いけど、下前歯の内側なんか、茶色というより黒に近い惨状。コーヒーも紅茶も飲まないのに、あんまりだー。
やむを得ず、新規開店のキレイな歯科医院に行き、着色取ってくださいとお願いしました。見た目の改善が目的だから、エアフローなどパウダーを吹きつけて磨く保険外診療を想定していたのですが、「うちは基本的に保険でやりますよ」と言われ、実際それで見違えるようになりました。
保険治療だから歯石取りは2回に分けて行い、レントゲンや歯周検査も強制(?)されます。
自費のクリーニングは6,000円前後らしいけど、保険で4回通えば初診料含めてそのくらいかかるから、どっちがお得かわかりません。1度で済むぶん、自費のほうが時間の節約って気もします。
そのときの歯周検査で、右奥7番のポケットが正常化していると判明しました。つまり3ミリ。バンザーイ。
前のクリニックではひとつの歯につき3か所計測していましたが、新しい医院では4か所。結果は用紙に手書きではなく、タブレットみたいな画面に表示されます。
6ミリが3ミリになったとはいえ、検査時のプローブ出血は両奧と上前歯の裏側で見られるし、左に4ミリがひとつだけ残っていて、手放しで喜ぶわけにはいきません。
それでも歯石を半年間放置し、自分で磨いただけでここまで来たのだから、一定の効果があったと判断して、私が実践した方法を紹介いたします。
それが記事タイトルにもあるように、食前の歯磨きです。
なぜ食前に
歯磨きは食後にするものという固定観念があります。
10年ほど前から、食後すぐの歯磨きは酸がエナメル質を破壊するから避けるべきだという説を見聞するようになりました。食後に歯を磨くのは世界中で日本人だけなど断言する歯科医さえいます(ほんだ歯科)。
が、よっぽどエナメルが弱い体質でない限り気にする必要はないという歯科医が多数のようです。
柑橘類や酢のものなどを食べたときだけは、食後30分くらい歯磨きを控えるほうがいいとも聞きます。
私が食前に磨き始めたのは、そういう見地とは別です。
なかなかポケットが改善しないのに焦って、歯周病関連本を何冊か読みました。
そのうちの1冊に、歯垢がどのようにつくかを述べたくだりがありました。歯垢は口内細菌が唾液中の栄養(糖分)を餌に繁殖した結果であり、ものを食べればつくのではない、何も食べなくても増えるのだ、と。
それまで漠然と考えていたのはこうです。前回の食事のあとに磨いて間食はしていないから、次の食事の前には歯はきれいなはず、食事をしたら一気に歯垢がつく。だから食後の歯磨きが重要だ。
そうではなかったんですねえ。食後歯磨きをしようがするまいが、新たな歯垢が増え始め、次の食事の前にはべっとりついているのです。
だからそれを落として、きれいなお口でご飯を食べよう。
もちろん、食前についていた歯垢を食後に落とせば同じではないかという意見もありましょう。
でも食前には歯垢がいっぱいと知ってしまうと、菌だらけの汚れた口で食べるのって、抵抗ありません? できたての歯垢が、咀嚼や食物の摩擦ではがれ落ちて、胃に送られたり、ポケットの中に押し込まれたりしそうだし。
具体的なブラッシング
朝起きたら、バトラーCHX洗口液を含んでくちゅくちゅし、吐き出したあと、10分ほどかけてていねいにブラッシングします。使う歯ブラシは、その日の気分によって、ガム4列コンパクトか、プロスペックスタンダード。硬さはふつう。
プロスペックは磨きやすく、歯間にも入りやすいのですが、高価ですぐに毛先がバサッと開くのが難点です。ガムは歯間を磨くのには適しませんが、安くて頑丈なのが取り柄。
歯ブラシの当て方。以前は、当時通っていた歯科医院の歯科衛生士に指導されたように、斜め45度くらいにして、ポケットの中に毛先を入れていましたが、最近は歯面に垂直に当てるようにしています。歯茎のきわは軽い力で何度も何度も毛先をふるわせます。
昼食前と夕食前には、何もつけず水と唾液だけで5分ほど磨きます。夕食後にはフロスもします。歯間ブラシは使いません。
寝る前には、何もつけず10分間かそれ以上。その後ルシェロホワイトというホワイトニング歯磨き剤を、乾いた歯ブラシ(ピュオーラふつう)につけて、円を描くように1分半ほど軽くこすります。これは着色のひどさに閉口して、最近付け加えた習慣です。スーパースマイルというアメリカの製品を使ったこともありますが、ルシェロのほうが粒子が細かく、歯にやさしい印象。2回ほどすすぎ、ピュオーラのやわらかめに高濃度フッ素入りチェックアップルートケアをわりとたっぷり取り、歯全体に塗りつけるようにします。舌に残った歯磨き剤を軽くこすり取り、余分な歯磨き剤は唾液とともに吐き出しますが、うがいは10~20分間我慢。その後軽くうがいしておしまい。
食後に磨かなくて気持ち悪くないのかって?
・・・実は、食後にもブラッシングしているんです。歯茎が後退して、歯間の根元にすきまができ、食べ物のかけらがはさまりやすくなったので。
このとき使うのは、V-7レギュラーヘッドという、2列植毛歯ブラシで、硬さはふつう。1分くらいでおおむねスッキリします。毛先が歯間に入りやすい構造で、食片を押し出してくれるのです。毛先で舌の上をさっとなでて、残った食べ物の味を洗い流します。
歯間がすいていない若いかたは、食後にはぶくぶくうがいする程度でじゅうぶんではないでしょうか。
『つまようじ法』で知られるV-7(ブイセブン)歯ブラシ。私は爪楊枝代わりに使用。毛先がくっついてV型になっています。しばらく使うとくっついていたのが開いて、単なる2列歯ブラシになっちゃいます。
磨き過ぎの懸念
歯ブラシ5本使って、日に7回。まるでいちんちじゅう歯磨きしているような印象ですねえ。
そこまでする必要があるんでしょうか。磨き過ぎにならないんでしょうか。
多くの本には、歯磨きは1日1回でOKと説かれています。ただし、歯垢がきちんと落とせていればとの前提です。
あいにく、普通に磨いていても歯垢はなかなか落ちてくれないものなんです。歯科医院で染め出し液を塗られてみると実感します。
私も市販品を買って染めてみました。歯磨きしたあとなのに、真っ赤っか。
愕然としたのち気を取り直して磨き直し、再度染めたらやっぱり真っ赤。なぜっ? 歯茎の縁や詰め物と歯のすきまなどが特に染まりやすいようです。
どうやらこの製品に問題あるような感じ。歯科医院で使っているのよりもやたらと染まりやすく落ちにくい。歯ブラシが染まって不快だし、味もひどい。
ミラーを使っても、奥歯の外側はよく見えないから、結局こういうものは当てにせず、自分の感覚を重視して磨くことにしました。
歯磨きの回数が多ければ、前回磨き残した部分も今回落ちる可能性があるということです。
実際の話、1年半せっせと磨いていたのに磨けていず歯周病が悪化した、歯医者に通いながら定期クリーニングもして、自分でもさらにていねいに磨くようにしたのに1ミリしか改善しなかった。そういう事実を踏まえると、私は歯磨きがヘタで、さらには口内細菌が繁殖しやすい体質のようです。これはもう、回数で補うしかないんじゃないの。
幸い歯茎はじょうぶなほうで、フロスがバチンと入っても傷つくことはありません。歯茎の後退は過剰な歯磨きのせいではなく、それ以前からです。
自分では、これだけしつこく磨いたからこそ改善したのだと信じています。
歯周病が気になるかたは、だまされたと思って1度お試しくださいませ。でも、忙しい現代人にはなかなか実行困難なのもわかります。せめて朝食前と夕食前、就寝前の3回磨くようにしてはいかがでしょう。