かけた電話に相手が出ない場合、どのくらいであきらめますか。7コール? 12コール?
20回も鳴らすのはしつこい人。50回以上だとアブナい人、かな。
不気味な電話
日曜日の午後、固定電話のベルが鳴りました。
音は聞こえたものの、風呂掃除の最中で、手袋が泡だらけ。大事な用件だったらあとでまたかけてくるだろうと、無視を決めました。
が、ベルの音はいつまでも鳴り止まない。200回くらいで数えるのをやめました。掃除をおおむね終え、電話のある居間に入ると、ヒステリックなやかましい音が耳を打ちました。
わが家の電話機は千円台の安物。音量を下げる機能くらいはあるけど、受話器を取らないと操作できないのです。
ナンバーディスプレイなどには加入していないので、発信者は不明。相手が誰であれ、こんなに長々と鳴り続けたあとで電話に出るのは、ちょっとためらいますよね。
別に、出たっていいんだけど。買い物から帰ってきたら電話が鳴ってた、てな言い訳もできるし。
問題は相手側です。何百回も電話を鳴らす人間に心当たりはありません。知り合いだったら、その人を見る目が変わっちゃいます。
知り合いでないとしたら? 適当な番号を押して嫌がらせのため鳴らし続けている、とか。いや、そりゃヘンだ。常識的に、電話に出ない理由の第一は留守だから。無人の家で電話が鳴り続けても、住人は痛くも痒くもないはず。
もしもこちらが在宅だと確認したうえで鳴らし続けているとしたら? 見張られているんじゃないかと、背筋が寒くなりました。
いろんな考えが頭の中を駆け巡っている間も、電話は鳴り続けています。すでに30分以上は経過したみたい。
耳も慣れてきたので、夕ご飯の支度をしながら、さらに考える。
悪意ではない可能性。非人為的という言葉が思い浮かびました。つまりシステムの不調です。
太古の黒電話時代、小耳にはさんだ都市伝説のようなもの。AさんがBさんに電話して、Bさんが先に切ったあと、Aさんが受話器を置かずにいると、その間Bさんの電話は誰がかけても話し中になるのだとか。真偽のほどは定かではありません。
意中の人へのカノジョからの電話を阻止すべく実践した女性もいたらしい。自分の電話もずっと話し中になることを考慮せずに。
それに似たような現象が起きているのでは? 相手はすでに電話を切ったのに、何かのはずみで通信機器に認識されずにいる。
ちょっとばかげているかな。当時とは比較にならないほど技術は進んでいるはずだし。
ここまで来て、もっとありうべき妥当な推論にたどり着きました。
相手は受話器を置いたつもりだったのに、それが浮いていて、切ったことになってないだけ。その後電話機を離れたので、いまだに気づいていない、と。
それでなんとなく安心して、そっと受話器を取り、耳に当てました。
・・・無音。
つながったという印象ではなく、人がいる気配は全くなし。不可解な気持ちで受話器を置きました。
鳴り始めて1時間以上。ようやくわが家に訪れた静寂でした。
嫌がらせなら、またかかってくる可能性大ですが、その後おかしな電話は全くありません。
しかし、話はそれで終わり、ではなかったのです。
セキュリティの危機
3日経って水曜日の夜。
パソコンで作業していたら、突如警告ウインドウが開きました。
ブラウザは閉じていたので、流行りの悪質リダイレクト広告とかではなく、ウインドウズの正規警告です。セキュリティソフトが最新の状態ではないので対処しなさいと。
慌ててセキュリティソフトを開くと、手動アップデートを促す文言が。最終更新は3日前でした。通常は自動で更新されるはずなのに、なぜ?
手動更新を試みたけど、危惧した通り、エラーになりました。ネットワークに接続されていないというのが理由です。なんなんだあ、いったい。インターネットはちゃんとつながっています。この上なんに接続しろというんだ。
セキュリティソフト配給元であるNTTサイトに行き、FAQなどで現象と対策を調べたけど、よくわかりません。
問い合わせフォームを見ると、問い合わせが殺到しているので返事は2、3日後になるとのこと。なんたる悠長さ。ムカッと来たので、やや高圧的な文章で問い合わせを送りました。
さっさとパソコンの電源を落として就寝。
今度は電話の故障
翌朝9時過ぎ。
不安だから3日も待ってらんない。サポセンに電話をかけることにしました。
すると、電話がつながらない。受話器を取ると、ウーンというようなあの音が聞こえ、ダイヤル音もピポパポと異常ないのに、それ以降が無音。呼び出しをしないのでした。
そこで気がついたのです。日曜日の怪電話以降、どこからも全く電話がかかってきていないことに。
試しに携帯から固定電話にかけたら、やっぱり呼び出しをしません。もちろんベルも鳴らない。
わが家の固定電話はインターネット回線を使う「ひかり電話」ってヤツです。停電時や回線に不具合が起きたら役に立ちません。
電話線の根元には、インターネットの接続を制御する装置がふたつつながっています。白いのがモデム。黒いのはゲートウェイとかいうらしいけど、名称ははっきりせず、マニュアルには「RT-500」とか「本商品」などと記載されています。どちらもランプの明滅はいつも通りに見えます。
携帯から回線問い合わせ専用ダイヤルにかけ、ひかり電話がつながらないと伝えました。
黒い装置の状態を尋ねられ、向こうからも電話をかけたりした結果、ひかり電話の信号が送られていないようです、では黒い機械をリセットしましょうとのこと。
リセット・・・って、電源コードとLANカードを抜いてまた差し込むだけ、なんです。
それで電話はつながるようになりました。あっけなーい。
セキュリティソフトのアップデートも同じころから停止してるけど関係ありますかと問うと、自信ありげではないけど、とりあえず確認してくださいと言うので、パソコンを起動し、セキュリティソフトを見ると、いったんはエラー表示が出たものの、手動で更新すると正常に戻りました。
原因は同じだったようです。
ひかり電話とセキュリティソフトって、どういう関連があるの?
正確なところはわかりませんが、受信トレイを見たら、先日の問い合わせに対する返信が届いていました。2、3日かかるだなんて脅しときながら、朝一に送ってくるなんて、対応迅速過ぎ。こういうのもかえって困るのよね。
そのメールには
セキュリティ対策ツールのアップデートでは、インターネット接続とは異なる、「IPv6」という通信を使用して専用サーバーへの接続を行います。
とありました。
つまりひかり電話もIPv6でつながっているということでしょう。
原因は怪電話?
怪電話の時点まではひかり回線は正常だったと思われます。結局あの電話はなんだったんでしょう。
普段から固定電話が鳴ることはまれで、たまにあっても、保険の勧誘が主です。しかし日曜日は向こうもお休み。
実際に誰かが電話してきて、あまりに鳴らし続けたから装置が疲弊した。あるいは、回線に異常が起きたから、かかってきていないのにベルだけ鳴った。
誰がかけたにせよ、1時間も鳴らすことなんてありえないから、故障が先説のほうが納得いくかなあ。
今のところ真相は闇の中です。